「フォークオフセットチョイスに関して」
2019モデルの発売決定の際に、クロマグ のフレームもRockshoxが発売した短いオフセットフォークを装着する前提での設計になったと聞いており、私はChromagの創設者であり代表のIanに、短めのオフセットフォークを選んだ時の特性やアドバンテージがどのようなものなのか、また現地のライダー達がどう意識しているのかを確かめる質問をしました。
下記返答の内容は世間一般に語られている内容と異なるような部分もありそうですので、日本の皆さんの一部にはあまり釈然としないところがあるかもしれませんが、クロマグのライダーやファミリーライダーの全員が普段の生活の中でトレイルライドにかなりのウエイトを置き、トレイルで過ごしている時間は私たちの想像を遥かに超える長さのライダーです。そんな彼らの言うこと、感じること、思うことはものすごく確信をついていることであると思います。
下記がChromagの創設者で代表の Ian Ritz氏 の説明です (2020/06/18)
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フォークのオフセットのに関してはあなただけでなく、多くの地元ライダーたちからも聞かれる質問です。
クロマグが採用しているロックショックスにとどまらず、多くのフォークメーカーが多彩なバリエーションを用意している現状に正直私たちも正直困惑しています。
最初に述べさせていただきたいとても重要なことは、オフセットの違いによる大きな差はそのパフォーマンスにおいては殆ど無いという結論です。私たちはオフセットの違うフォークでテストを重ねましたが、その違いを明確に述べることはとても難しく、たとえライディングの際にライダーがそのフォークオフセット双方の違いを感じることができたとしても人間が備える身体能力、運動能力としてライダーは簡単にその違いに慣れることができてしまうということです。
1回から2回長めのライドで慣れて順応してしまえるという事実。その中で私や仲間の皆が感じた小さな違いをあえて述べさせていただくとしたら、その違いはライディングスピードとトレイル路面の違いで生まれるようです。
_テクニカルセクションなどでゆっくりなスピードで乗っている場面で、
登りも降り問わず言えることはオフセットが長いフォーク装着の方が、タイヤの接地面が受けた圧力をよりコントロールし易い傾向が顕著です。例えば、テクニカルトレイルで石や木の根を直角にゆっくり慎重に乗り越えるような場面を想像してください。乗り越える際タイヤの接地面から伝わるインパクトがホイールを介しハンドルバーまで一方向に向かい伝わってきます。この際長めのオフセットフォークだと乗り越える物体をまず察知するタイミングがほんの少しだけ前もって感じるということが物理的な原理からは考えられます。そのこともあるのか、衝撃をしっかり往なして、ホイールの進行方向つまりは自分のバイクが向かっている方向を保ったまま向かいたい方向をキープしてくれる傾向にあります。
_ミディアム~ハイスピードライディングの場面で、
路面の状況変化により瞬時に多様にホイールに伝わってくるような場面では短めのオフセットフォークがベターと考えられます。このようなスピード域の場合路面の凸凹からのインパクトが連発することになりフロントタイヤでその衝撃を受け止めることになります。凹凸の衝撃を受けるフロントタイヤ、もしそのインパクトがタイヤの接地面真下に対し、インパクトの角度が大きいとその衝撃がフォークを押す力もフォーク伸縮方向からずれた方向に向かってしまうことになります。短めのオフセットフォーク装着の場合ダイレクトに路面からのインパクトはより瞬時にフォークに吸収されるため、イージーにより良いコントーロールが期待できることになります。
さて、一方で私どもが普段から繰り出しているトレイルの多くのセクションがスロースピードで通過すべき難易度のあるテクニカルセクションが多く、それにチャレンジすることも最大の楽しみであり、トレイルライドの醍醐味になります。個人的にそのような場面が多い場合は長めのオフセットフォークを選ぶ方がはるかに楽しいライディングが期待でき、仲間たちも同じ意見をもっています。その反面、トレイルにも直線部分やバームができているハイスピードで通過できるターンのセクションも少ないわけではなくハイスピードライドセクションも多く存在しているほか、世界的に有名なウィスラーのバイクパークにも容易にアクセスできる場所、バイクパークはハイスピードセクションの連続になります。短めのオフセットがベターチョイスになります。ハイスピード下ではその威力が活かされます。
最後にもう一度申し上げるのであれば、実はその差はとても小さいものであり、あえて述べれば上記のようなことが言えるというレベルです。
結論としてはどちらのタイプでもクロマグのバイクに装着すれば良い働きをしてくれるはずです。
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以上が Ian Ritz氏 からの説明になります。
また別の日に聞いた話もお知らせしておきます。
クロマグファミリーの多くが短いオフセットのフォークの出現時にフォークの入れ替えをした事実があります。やはり今までにない短めのオフセットフォークの出現はコアなライダーたちの気持ちを動かしたのです。そしてあるライダーはそのまま短めのオフセットを使い続け、その一方でもとのオフセットフォーク(長め)に戻して乗っているライダーもいるそうです。要はそのライダーの乗る場面、好みによりどちらでもOKということになりますので、ご自分がどの様な場面で多く乗るのか、バイクパークで飛ばすのか、上り下りのあるシングルトラックでトレイルライドを楽しむのか、、、
その辺が選択の判断材料になるのではないかと思います。
楽しく悩んでいただければと思います。
2020.11.03
クロマグジャパン 代表 海上浩幸より